スタッフインタビュー #5
劇伴 横山克インタビュー
横山克(以下:横山):キングレコードさんからお声がけいただきまして、最初に企画書を拝読しました。そこに描かれていた、自分の好きを見つけていくという物語に、これは心に残る作品になるだろうなと感じ、参加を決めさせていただきました。
横山:個人的にはまひるがすごくいいなと思っています。自分の中の好きがちゃんとあって、創作にも活かしているんだけど、今一歩踏み出せないでいる。そういう内在する想いを抱えているところに共感しました。
あと気になるといえばサンフラワードールズ周りでしょうか。楽曲的にも、今と昔を想起させるものになっているので、どう表現されていくか楽しみです。
横山:キャラクターの背景を考えて楽曲を制作しています。時系列でそれぞれの関係値が変わっていくこともあって、音楽でもそれを表現できるように進めていきました。
あとは、この作品における劇伴とは登場人物の心情を深掘りするというのはもちろん、劇中に登場する創作物と創作物の間を繋ぐという役割もあると思っていたんです。だから今回は、独特なレトロな音を意識しながら、感情を浮かび上がらせてくれるような曲を目指していました。その甲斐もあって、渋谷が舞台で、今風なのにどこか郷愁を感じるというか、本作の雰囲気にあった少し質感が違う表現ができたと思っています。
横山:本作では多数の楽器を海外で録音したりもしていて、曲中の音の表現に注目して欲しいですね。弦楽器の音は主にイタリアで録音したのですが、それがこのヨルクラという作品の質感にハマっていると思っています。日本で録音するとカチっとした今っぽい音になるのですが、イタリアで録ると少し感情的な柔らかい音になるんですね。どちらが良いというわけではなく、様々な国の表現を織り交ぜることで曲に今風な部分があったり、レトロな部分があったりと、あえて個性がぶつかりあうことで生まれる音の表現に注目していただきたいです。
横山:クリエイターはなぜクリエイターなのか、というのが詰まっているところだと思っていますね。自分の”好き”というのはクリエイターの源かなと思っています。あるものを目指す事において、それを頑張ってやるのか、好きでやるのかには違いがある、といった論議を見かけたことがあります。私自身そうなんですが、息を吐くように自然体で作品を生み出していっている感覚があります。つまり、いちクリエイターとしては、そう思い返してみると、もはや好きとか嫌いとかの感覚ですら、とうの昔に忘れちゃったんですよね。そういったクリエイターの性のようなものを作品を通して見ることができるというのは、何かクリエイティブな活動をしたことのある人たちや、これから体験するかもしれない人にきっと響くと思っています。